■登窯・南蛮焼(焼き締め)について
○焼き締め
焼き締めとは、釉薬を全くかけないで、最後まで焼きとおす焼成技法のことです。普通は、薪窯などで自然に灰がかかって溶けて流れるような技法を用います。炭化焼き締めは、作り手が最終仕上げの景色を意図出来ないところに難しさと醍醐味があります。釉薬を使ったように光沢があるものでも、その時々の環境の炎と土の調和が織りなしたものであり、作家が故意に薬を吹き付けたりして創ったものではありません。そのため、全く同じように焼き上げることは不可能です。この世にたった一つの存在。ですからとても稀少価値の高いものです。じっと見つめているとそこに一つの宇宙が存在すると言っても過言ではありません。
○南蛮焼き
『南蛮』とは古く中国においてインドシナをはじめとする南海の諸国の呼称です。
『南蛮焼き』とは琉球・台湾・中国南部・ベトナム・マレーシア周辺の粗陶の総称で、焼き締めの無釉陶のことです。
益子には『南蛮土』は無いと思っていましたが、偶然、益子町新福寺の土を焼いてみたところ可能な事がわかり、以来使用しています。耐火温度は1,200℃〜1,230℃位で、杉・雑木・松で3〜4日焼成します。
当窯の立地ですが、東から西に向って山の斜面に割竹式連房窯を築き、煙突のすぐ上には昔の井戸が掘ってあります。窯の下に地下水を流し、一定の湿度を保つことが、艶消しのしっとりとした肌合いに焼きあげる条件と悟りました。湿気がないと茶っぽい風合いに仕上り、古代風味は損なわれます。
○『南蛮焼の親水性』について
焼締め器は、物理的・感覚的にも、水・酒等によく馴染み、より美味に感じられることも特徴のひとつです。
焼き上がりの具合を確かめるため3m位の鉄棒で真っ赤な器を引っ張り出して水中に入れます。生れてはじめて産湯につかる赤子のようにいとおしい一瞬。この世に生を受ける瞬間です。